コスト縮減は社会資本整備事業における重要テーマの一つである。少子高齢社会の進展に伴い、国と地方の財政は今後さらに厳しさを増すことから、建設投資の減少傾向は避けられず、技術開発や合理化・効率化への努力によりコスト縮減を図ることが必要とされている。一方、社会の経済的発展を促し、住民の安全かつ安心な日常生活を支えるために、道路、橋梁、トンネルなど多くの構造物が建設されてきたが、それら膨大なストックの維持管理に対し、いかに効果的・効率的に取り組んで行くのか、重要な課題となっている。すなわち、既設構造物を上手に維持管理し、少ないコストで長持ちさせる技術が必要とされているのである。ここに紹介する既設橋梁の補修・補強設計事例は、塩害によって損傷を受けた鉄筋コンクリート桁橋に対し、性能照査型設計法の観点から工法検討を行い、ライフサイクルコストの最小化を図ったものである。なお、第2床丹橋で採用した補修・補強工法は新たに開発された「スマートショット工法」であり、既設断面にアラミドメッシュを設置し、その上にビニロン短繊維を混入したコンクリートを吹付けて一体化するものであり、ウォータージェット工法による劣化部分の除去と組合せることで、合理的な補修・補強が実現できることも特徴のひとつである。本編では、塩害による損傷状況の調査、診断、補修・補強工法の比較検討と耐久性の評価、採用工法の詳細など、調査設計の全般について報告する。 |