石狩川の中下流域には、旧豊平川、幌向川、篠津川、旧美唄川等を中心に、およそ620km2にも及ぶ泥炭が分布しており、その厚さも深いところでは10m以上あり、平均でも6mに及んでいる。これらの泥炭地区における河川では、築堤の沈下、破壊、あるいは河床隆起等により、他地区と同等の治水安全度を得るために、非常に困難を窮めている。そのため、昭和50年8月洪水においては、泥炭軟弱地帯である大曲左岸・豊幌築堤のように溢水破堤の原因となり大被害をもたらすなど、これら泥炭地区が洪水の弱点部として浮彫りになったのである。従来、河川定規は、流下能力に主眼をおいて決められており、築堤の施工安全性を確保するための泥炭軟弱地盤対策も必要であろうが、他河川と同程度の治水安全度とし、さらに高めるためには、堤々間、高水敷巾、高水敷高、低水路河道の大きさ等の河川定規が問題となる。また、泥炭軟弱地盤における設計施工指針は、道路盛土についてはかなりの検討がなされているが、河川のように低水路河道という大きな切欠きを有し、また沈下をある程度許容できるとう河川堤防については、その適用が困難である。石狩川において、本格的な基盤処理が月寒川で実施されて以来、約10年経た現在、それらの施工実績、経験等をふまえ、また暫定堤防から完成堤防へと移行しようとする激特後に向けて、泥炭軟弱地河川の設計施工指針の作成は急務であると思われる。そこで泥炭軟弱地河川における施工実績をふまえ、理論的計算等により、河川定規を検討し、河道計画あるいは設計施工指針に資するために、基礎資料の収集、整理及び理論計算の簡易化、河道形状と力のバランスについての理論計算、及び今後の方針等の検討結果を報告するものである。 |