一般に水理学の諸現象は、Navier-Stokesの運動方程式によって表わすことができるが、この方程式は非線形であり、そのまま解析的に解くことは不可能である。この方程式も流れが時間的に変化しない場合には、ベルヌイのエネルギー式やManning の流速公式のような簡略化された式となり解が得られるが、このような方法で解ける現象は限られており、一般には微分方程式を数値的に解く方法がとられている、不定流の数値解法には、特性曲線法による方法と差分方程式による方法とがあり。本文では、後者の差分方程式について述べることにする。差分方程式は、微分方程式の微分係数を離散量として近似し、簡単な代数方程式に置き換えたものである。差分近似の基本的形式には、前方差分、後方差分、中央差分とがあり、これらをいろいろ組み合わせることによって、不定流の特長的な差分方程式が種々提案されている。これら差分方程式を大きく分けると、陽な方法と陰な方法とに分類される。陽な方法とは、ある時刻の未知数を、それより前の時刻の既知数によって求める方法をいい、陰な方法とは、ある時刻の未知数を求める式中に、同じ時刻の未知数が入っているために、一つの式では未知数が求まらず、差分方程式を連立して解く方法である。この連立方程式を解くには消去法と繰り返し法とが提案されている。これらの方法は計算の安定性、収束性、近似精度、演算速度などの面で長所、短所があるが、唯一性は存在しないからどんな差分法を用いるかはそれぞれの精度に見合った取り扱いの容易なものを選ぶということでよいと思われる。本文は、提案されている差分法のうち、陽な方法として1)2step Lax-Wendroff法 2)蛙飛び法、陰な方法として 3)二重掃き出し法の三種類について比較検討を行い、それらの有用性を確めたものである。 |