前報まで、北海道のような寒冷地における用水路の建設には、温暖な地域にはみられない技術上の問題が、いくつかある。このうち、凍結・凍上対策、いわゆる凍害対策は、最も重要な問題の一つである。北海道開発局発足以来、現在まで600km以上の用水路が建設されてきたが、その一部はすでに破損が生じている。これらのうちには、地震・洪水など被災原因の明らかなものもあるが、凍結・凍上など寒冷地特有の現象によると思われる破損も、近年たびたび報告されており、この凍害問題の早急な解決が望まれている。このような状況から、開発局は、これらの問題の調査と、寒冷地における用水路の設計・施工指針の確立に取り組むことになり、昭和47年度以来、道内各地で実際に使用中の水路や、モデル水路に観測施設を設け、調査を行ってきた。現在までの調査の結果、従来の用水路の設計条件には見込まれていない凍上力や熱応力などの外力が、気象条件・土質・水路形式・現模あるいは時間などにより、水路側壁に複雑に作用し、種々の側圧変動を起こしていることが確認された。今回は、現在までの観測とこれらの側圧変動の要因および、その発生機構について報告するとともに、構造設計上の問題点について述べる |