一般的な「ノリ面工」の設計段階については、大まかに次の3段階に分ける事が出来る。第1段階は土質と切り深に応じたノリ勾配の決定であり、第2段階は切り深の増加に対応した土層の変化と地中水やすべり易い土層等、個々のノリ面条件に対応したノリ勾配の再検討および地中水排除などのノリ面すべり崩落対策の設計である。第3段階はノリ面の吸水乾燥や、凍結融解などの風化による崩落対策とノリ面表流水等による浸食崩落対策の設計である。この風化侵食対策として行う一般的な対策工法は植生工であるが、ノリ長が長くなるなど、ノリ面表面積の増加に伴い、降雨等によるノリ面流水量の増加の他、流水の落差に比例してノリ面侵食エネルギーが大きくなる場合や、植生工の一部として行う客土がノリ面に安定し切れない場合は、表面水排除や土止め等の侵食崩落対策として「ノリ枠工」等が行われる。第1および第2段階までは、仮定にせよノリ面が力学的に均衝を保ち得るように調査試験データなどを用い安定計算を行って、工費を念頭におきつつノリ面の切り直しや、杭・アンカー・擁壁工等の抑止力を想定した対策工の設計を行う事が出来る。しかし第3段階の風化侵食対策は数値にもとずく設計が困難である。この場合の一般的な設計順序は植生工で保護し切れぬ場合に「ノリ枠工」類の設計を行うが植生工と枠工の工費の差が大きいうえに、植生工のみで充分とするノリ面設計上の限界基準がないため、力学的な明確さをもって割り切れない面がある。又、ノリ面工には多くの種類があって各々工費的な差異も大きいのであるが、これらの使い分けや工費と保護効果の関連性などの面に明確でない部分があるために「ノリ枠」を主とするノリ面工の選定について具体的な指針を求められるケースが多い。そのためここでは、これら「ノリ枠工」の選定上の手がかりをつかむために、今回「道内の国道工事等において昭和52年度に施工されたノリ枠工」を対象として、その主な使用目的等に関する実態調査を行ったので、これらを取りまとめ2・3検討した結果について報告する。 |