河川砂防技術基準(案)によると、河川法施工令第10条第1項第2号で河川工事の実施についての基本となるべき事項のひとつとして考慮すべきとされている〝流水の正常な機能の維持〟に対応して、これに必要な流量を〝正常流量〟と定義し、河川の主要な地点においてこれを設定するものとされている。また、正常流量は周知の10項目の事項のうち、流水の占用を除いた9項目を考慮して渇水時に維持すべきであるとして定められた流量―維持流量、およびそれが定められた地点より下流における流水の占用のために必要な流量―水利流量の双方を満足する流量であるとされている。この正常流量は、河川における低水計画の基本となるものであって、種々の利水計画の策定にあたっては、十分考慮されなければならず、ダム計画においても、維持流量は、その定義からもわかるように、必要な水理が行われたうえで、なお、河川を流下し、舟運等の9項目の機能を維持するため必要な流量であって、河川においては、低水計画を策定するうえで最も基準となるべきものである。それにもかかわらず、実際に正常流量あるいは維持流量が設定されている河川は非常に少ない。維持流量が、なかなか設定されない理由は〝舟運、漁業等9項目の流水のもつ機能と流量との間の物理的因果関係を数値的にとらえることが困難であること〟につきると思われる。維持流量が、低水計画の最も基本となり、ダム計画あるいは水理権行政等の重要な役割を担うことになるため、その決定に慎重とならざるを得ない面もあると思われるが、そのことも必要流量を物理的に決定することがなかなか困難であることに起因してるといえよう。本研究は、昭和50年度より指定課題としてとりあげられ50年、51年の2ヶ年は実態調査及び資料の収集を行った。50年度は、塩害の防止、舟運、河口閉塞の防止、流水の占用、流水の清潔の保持、51年度は、漁業、地下水の維持、観光、動植物の保護、河川管理施設の保護、流水の清潔の保持(継続)に関して、それぞれ確保流量を検討するために必要と思われる資料の収集、および実態調査を行った。今年度は、これの調査結果を参考とし、各項目毎に確保流量を考える上での具体的な検討方法を提案した。ただし、流量と維持すべき機能との関係を一義的に決定することは困難であるため、おおむね妥当と思われる範囲を設定するひとつの方法の示すことにとどめてある。さらに、ケーススタディとして、この方法を湧別川に適用、確保流量をとりまとめてみた。 |