近年、地下水に対する関心が高くなってきている。これは、本州各地の都市において、各種の地下水障害が発生してきているためである。豊平川扇状地においても、札幌市を中心にその周辺地域の発達は著しく、それに伴って、人口と産業の集中による土地利用形態と範囲は、大きく変化してきている。人口と産業の都市集中は、必然的に揚水量が増加し、地下水位の低下、地盤沈下、地下水質の悪化などの弊害があらわれてくる。地下水はありふれた地下資源ではあるが、また特異な性格をもっている。その一つとして、地下水は、汲みあげてもそれだけ減るわけではなく、もちろん、無尽蔵でもない。地下水の賦存量とは、人為的な汲上量と天然の涵養量とが時間的にもバランスしている状態での流動量をいう。したがって、井戸の増設によって自然水位が低下したとしても、その後低下が止まったとすれば、その時点では賦存量はふえたことになる、また地下水は、一連の帯水層に含まれているものでも、流れの方向とか季節などによって、その水質は変化する。札幌市街の主要部は、豊平川扇状地に立地している関係で、地下水にはきわめて恵まれ、地盤もまた優秀である。これらの好条件下で、豊平川扇状地は、優れた地下ダム的構造を形成している。しかし、今後札幌市の発展が続き、地下水の揚水量が増加することは確かであり、それに伴なって、年々地下水位低下が進行しており、遠からず地下水障害の発生が想定されている。地下水の賦存量や水質は、その容器であるところの容水地盤の規模ならびに透水性と、この容器へ注ぐところの水の系統あるいは流域の環境などに支配される。地下水賦存量を無視した取水は、近隣の既存井への悪影響をおよぼすばかりでなく、地盤不良地帯にあっては地盤沈下を誘引する原因となる。「地下水は、多分に公共性をもつ資源である」から、これを利用するにあたっては、調査・管理・利用を充実することに留意し、一元化した管理利用体制が望まれている。ここでは、豊平川扇状地における昭和49年度から昭和51年度までの、豊平川沿いに石狩川開発建設部が設置した10ヶ所の地下水観測所の地下水位、豊平川の河川水位(雁来)、降水量、揚水量等の資料を整理し、豊平川扇状地における地下水挙動を調査した結果を中間報告する。 |