本テーマの「波に関する研究」は、昭和50年度を初年度として3ヶ年計画で、海岸保全施設や河川改修の計画策定、及びこれらの工事を実施する上で必要となる沿岸の波浪特性を把握することを目的に検討を進めた。 このようなテーマを取り上げたのは、我国は島国で、その置かれている位置の関係上、夏から秋にかけての台風襲来による高波、高潮、冬季間の低気圧に影響される風波、地震による津波など海岸保全や河口部の改修に対する条件には厳しいものがある。しかし、近来の社会的要望による海洋性レクリエーション施設の需要増加、河口附近の高潮防禦を考慮した築堤高や、流水の円滑な疎通を計る河口部施設の計画策定、侵食に対する保全事業などがシステマティックに進められたのは、未だ日が浅いため資料が乏しく、計画上支障をきたしているのが現状である。我国は国土の面積約370,000k㎡に対し、海岸総延長は、約31,000㎞と極めて長大であるとともに大部分は山地部で、平野部は河川周辺や臨海部を中心に僅か30%程度であり、全人口の80%近くの人々が、これら周辺で生活を営んでいる。昭和51年度版海岸便覧によれば、海岸線総延長は、31,382㎞で、海岸保全を必要とする海岸は全体の48%程度の15,020㎞であり、残りの52%を占める16,362㎞は道路護岸、鉄道護岸、保安林等他の目的で管理されていたり、国土保全上の管理を必要としない岩礁などの天然海岸である。特に北海道の海岸延長は約2,878㎞で、日本全体の約10%近くを占め、長崎県の4,018㎞に次いで第2位であるが、要指定延長では1,736㎞、指定済延長でも1,592㎞と北海道が第1位を占めている。北海道の海岸線は単調で侵食作用が激しく、中でも日高、胆振沿岸並びに内浦湾沿岸が最も激しい侵食を受けている。そこで、初年度の報告書では、事業を計画、実施する上で各沿岸の波浪特性をより正確に把握しておくことが必要であり、データーを収集し頻度分布、未超過出現率などの統計解析を行った。また、施設の安全性の検討や構造物の設計に資するため、過去50年間の年最大波高を気象擾乱より求めた。次に、前年度報告書では、50年間の年最大波高の極値分布、及び潮位と沿岸情報を収録する海岸台帳様式の検討を実施した。今年度は最終年度として、構造物の設計に際して必要な来襲波のエネルギー特性の検討、並びに侵食実態を把握すべく深浅測量と航空写真による経年変化の実態を検討したので、その結果について報告するものである。 |