北海道の土地改良事業において「畑地かんがい」とか「畑かん」という事業が行われるようになったのは、昭和33年頃からである。それ以前の畑地開発は、耕地面積の拡大と火山灰地等の排水工事や土壌改良が中心であった。昭和30年代からの高度経済成長に伴ない、北海道の畑作地帯でも大規模経営えと構造改善が進展し、農業生産の安定的かつ優良品質の食糧の供給および省力的かつ高収益を得る農業を目指すようになった。このような農業内部の変革により畑作地帯での水の要求度が高まってきた。すなわち畑作地帯では、春耕、播種期の乾燥による発芽や、初期生育の遅れを防ぐ水分の補給、防除用水の確保、盛夏時の干魃防止のための水分補給であり、酪農地帯においては、畜含の清掃用水、糞尿かんがいにおける稀釈水および牛乳の冷却水である。北海道の畑地かんがいは、西南暖地の水がなくては作物の生育が成り立たないという乾燥地帯での必要性とは別の、例えば土地の技術研究発表会とか品質の向上、省力化とかという水多目的、多用途の利用を考えなければならない。北海道の気候的な特性を考慮すれば、畑地用水についても北海道的な意義づけが必要である。このような背景のもとに技術研究発表会において総合的な検討がされ、その成果は第15回(昭和46年度)からの論文集に収められている。ここに6年間の指定課題の終了にともない本報告をもって総集篇とする次第である。 |