寒冷地における道路舗装とそれに付帯する構造物などの土木工事で、土の凍結・凍上作用のもたらす影響は極めて大きい。特に、道路舗装に与える凍上現象は、北海道や東北地方はもとより温暖な地域でも山岳地帯においては重大な影響を及ぼすものである。凍上とは、地盤中に霜柱が発生し、それが寒気にさらされる方向に成長することによって地面が隆起する現象とされている。この凍上現象による道路舗装の破壊形態としては、凍上そのものによるものと、春の融解期に起こる路床・路盤の支持力低下によるものとがある。地盤中で霜柱が成長するときは、地下深くから多量の水を霜柱発生部分へ吸引集積するが、春の融解期にはその氷層が主として地表面から解けてその周囲の土層は飽和状態となる。この時期に多くの交通車両が供用することによって舗装用アスファルト混合物の下面の引張応力と路床上面のたわみ量が増大して舗装は破壊して、路面のわだちが集中する個所に局部的な沈下を伴つて亀甲状のひびわれが発生する。これが、融解期の路床・路盤支持力低下による舗装破壊である。これらの凍上による舗装破壊を防止するためには、凍上現象を支配している気温、土質、地中水、土圧などの要因のうち一つ以上を除去または改善すればよい。それには、凍上対策工法としての置換工法、薬剤処理工法、断熱工法、しや水工法などがある。このうち、北海道で主として採択されている工法は、その経済性、施工性などから、予想される凍結深さ内にある凍上性の土を凍上を起こしにくい材料と置き換える、置換工法である。苫小牧市美沢地区の一般国道36号に沿って築造された美々試験道路では、凍上対策置換工法について置換材料の種類ならぴにその厚さの違いによる路床・路盤支持力とその季節的変動、特に融解期の支持力低下を昭和43年度~46年度まで調査した。本研究は、美々試験道路で得られた路床・路盤各層の地盤係数にもとづいてその弾性係数(変形係数)を算出するとともにアスファルト舗装の層構造解析によって、凍上対策工法の力学的な評価を行ったものである。なお、この場合舗装での層構造解析に弾性理論解法を適用することについては、多少の疑問も起きようが、筆者らは諸外国の動向と寒冷地舗装の特定な環境条件である温度と載荷時間を設定することによって、この弾性理論計算が十分可能であると考えた。 |