北海道の畜産は、最近におけるわが国の食糧需要の増大に伴い、著しい進展をみせている。これは、道内の豊富な土地資源の有効活用と技術革新によるところが大きい。しかし、近年草地開発対象地は、劣悪な立地条件のところが多くなってきており、蹄耕法を主とする不耕起造成工法の重要性が高まりつつある。道内における不耕起造成法は、事業としては1965年以後団体営草地開発事業で試行的に開始されたものである。しかし、不耕起法による草地造成は、1975年までは造成された全草地面積の2%台にとどまっている。また、団体営によるものが93%を占めている。国及び道営の場合は、1975年以降のものが多くなっている。例えば、本報告の対象地区である三石中央地区(室建)の場合、草地造成予定面積410hzのうち、地形条件の悪い114ha(全体の28%)に蹄耕法を予定している。不耕起造成法は、土壌、草、家畜の生態を巧みに利用し、人為的な操作を最小限にとどめて牧草地を作り出すもので、機械造成とは対照的な方法である。現在技術的には、ほぼ完成されているといわれる(農林水産技術会議(編) 1975)。しかし、この報告の主な対象である土壌改良資材と土壌との混和、酸性矯正深など土壌学的観点からは、あいまいな点がかなり見受けられる。本報告は、1977年草地開発事業計画三石中央地区(今年本地区は造成を開始している)に設けられた不耕起造成による試験圃場において、PHを中心とした土壌の経時変化を2年間にわたり追跡した結果である。以下には、さらに、牧草地の成立過程や主要植生であるクマイガサの消長についても触れる。 |