夛頭飼養化の方向に進んでいる現在の畜産経営にとって、夛量の排泄物の処理が一つの隘路となっている、そして、牛房の総面積が200m2以上の場合、畜産排水は、水質汚濁防止法の現制対象とされている。そこで、肥培かんがいによるふん尿の土壌還元は、ふん尿の有効な処理法として、種々の効果が期待されている。肥培かんがいの利点は、省力化、土壌の肥沃化--牧草収量の増加、肥料節減、畜産口蓋の軽減などがあるとされる、一方では河川の汚濁、悪臭が環境へ及ぼす影響が問題とされる。筆者らは、肥培かんがいが、土壌、河川水質に及ぼす影響を明らかにするため、昭和51年度以来、興部町農協肥育センター圃場で調査してきた。今年度は、肥培かんがいと、降雨によるふん尿成分流出の関係を解明することを目的として、スラリー散布圃場において、地形の異なる3ケ所を選定し、数回の人工降雨試験を行なった。昨年も同様の試験を行なったが、その試験はスラリー散布1月以上経過していたのに対し、今回の場合はスラリー散布直後のものである。また、昨年の試験では限界降雨強度を求めた。本報告では、まず昭和53年度の試験結果の概略を述べ、ついで昭和51年度からの同圃場で実施した調査結果を総括する。 |