北海道のような積雪寒冷地における道路切土のり面は、春先の積雪期に小規模な崩壊や剥落などを含む崩落を起こすことが多い。このような崩落は、崩落土砂を発生せしめ、これがのり尻側溝を埋めたり、路面に堆積するなど、道路の正常な機能や安全な自動車交通を阻害するばかりでなく、場合によっては、大規模な地すべりを誘発する恐れもある。したがって、このような道路切土のり面崩落の実態究明とその結果に基ずく対策の確立は、積雪寒冷地における道路建設において、早急に解決しなければならない問題の一つと考えられる。また、最近は、道路とその周辺の景観の調和、さらには、環境保全が重要視されつつあるところから、このような視点からもこの問題を受けとめ、のり面緑化の問題とあわせて検討することも必要であろう。しかしながら、このような崩落は、地形、土質、地下水、気象等の多種多様な要因が絡みあって発生するため、適切な対策工法の選定・設計が難しく、一般的には、ほとんど、現場技術者の経験に頼ってきたのが実状である。この調査研究は、以上のような背景をふまえて、保護工の選定、設計などのついての考え方を含む積雪寒冷地における切土のり面の適正勾配の決め方、保護工の選定、設計、施工および維持管理に関する多くの問題について、現地調査、現場技術者の経験的判断などを通して検討し、これらについての考え方を整理することを意図して、昭和49年度から行われてきたものである。この調査研究の成果の統括の段階である本年度にあっても、なお、いくつかの問題が残されてはいるが、一応その成果を、「積雪寒冷地における切土のり面工便覧(案)」という形でまとめた。ここに、この調査研究の経緯を述べた後、この便覧(案)の概要について説明する。 |