サロベツ原野は北海道のほぼ北端に位置し、ほとんどが泥炭湿地である。開発に手がかけられたのは比較的新しく、昭和50年より「総合農地開発事業サロベツ第一地区」として着工された。この事業は草地造成を中心とした畑地造りであり、これに伴い基幹となるものは道路網である。しかし、泥炭地であるため道路の盛土を施工するに当たって生ずる問題は、泥炭地盤の強度不足と高圧縮性による地盤の破壊と沈下である。破壊は円形に近いすべりとなることが多く、特に側方流動の形をとる事もある。また、沈下については、圧縮・弾性・塑性・流動によるもの、さらに、せん断変形に伴うものが複合して生ずるものと考えられる。これら、破壊・沈下に対する対策として種々の工法が検討実施されているが、農道工事においては、工事費・工期などに制限があり、特に、高位及び中間泥炭地帯における農道の盛土施工においては、不等沈下の防止および泥炭地層の補強を目的として土木シートの布設がなされるが、現在市販されているシートを大別すると、透水係数10^-2~10^-3の織布、10^-1程度の不織布、プラスチックネットの3種類となり、それぞれの特徴を有している。今回は、サロベツ原野において性質の似かよった泥炭地を通る農道(第15号支線道路)1路線について、3種5タイプの土木シートを布設し、圧密沈下の経年変化とその影響範囲などを調べ、今後の施工順序、施工高、施工方法、完成時期、排水状況、不等沈下防止材などの合理的な資料とすべく50cmの暫定盛土をし、試験調査を開始しての中間報告とするが、今後数年において調査、測定を行い、その都度経過報告をする。 |