ポストテンションPC桁が施工されるようになったのは国内では昭和26年、道内では昭和29年からであり、他の構造物に比べ歴史が浅く耐久性に関する資料が乏しい。長時間使用したPC構造物に対する耐久性調査結果の集積が大切になってくる。PC構造物がグラウトに完全に包まれている場合には腐食は起こらない。しかしPC鋼線は強い引張応力をうけているため一度腐食が生じると、腐食は急激に進行しやすく、腐食が構造物に与える影響も大きい。グラウトの品質が悪かったり注入不完全で空隙が残っていると、内陸部で環境良好な場合でもPC鋼線に腐食が生じることが報告されている。初期のPC桁の施工に際してはPCグラウトの重要性が認識されておらず、またPCグラウト注入の経験や資材も十分ではなかった。しかしPC桁の縦ひびわれ発生問題が注目されるようになり昭和32年3月北海道土木技術会のグラウト指針ができた頃から、グラウトに対する認識も高まり注入技術や器材も改善されてきた。このように昭和30年代前半はPCグラウト技術の変革期であった。これらの時期に施工されたPC桁の調査を行ない、当時の設計・材料・施工技術の変遷を知ることは今後のPC橋の維持管理上大切なことである。コンクリート研究室では昭和51年倶知安橋・昭和53年奈江橋・昭和54年沼下橋、滝下橋の調査を行なった。まず現地でひびわれ調査・非破壊試験・コアー抜き等を行なった後に解体し、PC鋼線をシースごと研究室に搬入し、グラウトの充填程度・シースの腐食程度・PC鋼線の腐食程度などについて調査した。この他に昭和53年に現地調査なしで当研究室に桁の一部を運びこんで解体した潮見橋がある。本文はこれら5橋の結果について述べてるものである。以下5橋をA橋・B橋・C橋・D橋・E橋と表現する。A橋・B橋・C橋・D橋は内陸に位置しE橋は海岸から焼く1kmの所に位置していた。C橋・D橋は昭和33年以来当研究室でひびわれ経年変化を毎年観測してきた橋である。またA橋・B橋については完成直後に1度ひびわれ調査を行なっている。 |