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 十勝川水系における河川水と地下水との相互関係について

作成年度 1979年度
論文名 十勝川水系における河川水と地下水との相互関係について
論文名(和訳)
論文副題 昭和54年度(D-5)
発表会 昭和54年度技術研究発表会
誌名(No./号数) 昭和54年度技術研究発表会
発表年月日 1980/02/22
所属研究室/機関名 著者名(英名)
高橋繁樹
中村興一
森田護
秋本俊一
抄録
十勝平野は、第三紀中新世から始まる二つの大きな構造運動の交錯の中で形成されたと考えられており、この堆積層(十勝構造盆)が良好な地下水滞水層となり、地下水には質量とも恵まれている。特に帯広周辺は、北部を十勝川、東部を札内川が流れ、しかも十勝構造盆の最深部に位置するため河川水の地下水への補給、胚胎する能力、範囲も大きく、古くから飲料水、かんがい用水、水産事業用水等に使用されてきた。近年帯広市西部から芽室町にかけては、工業団地の開発が進められており、この区域での地下揚水量は、工業用水以外を含めて、昭和52年度で70,000m3/日に及び、これらに起因すると考えられる地盤沈下、地下水低下が生じている。将来揚水量は、150,000m3/日程度に増量するものと見積られており、これ等の現象は助長するものと考えられる。帯広市周辺の地下水利用のもう一つの特徴は、札内川流域にみられる。札内川流域は前述構造盆を形成している池田層上に発達した札内川扇状地が下流域の大半を占め、扇状地内には、大小の伏流水を集めて流れる河川が発達している。これ等河川水は本川流量に比べ、流量変動が少く、堰や樋門を築造せずに自然取水が可能なことや、伏流水であるため、水温水質がそのままで上水道用水やサケふ化用水の基準内にあることなどから、帯広市上水道用水やサケマスふ化場用水、営農用水等に古くから用いられていた。明治16年、十勝平野開拓の野望を抱き入植した依田勉三は、その拠点として、オベリベリ(帯広)の地を選んだ理由を「下れば川の氾濫に襲われ、上がればあまりにも不弁だ」としているが、入植早々、米作を手がけていることから、十勝川本川の洪水の影響を受けず、自然取水可能なこともその一つであったろう。このように十勝地方は、自然取水可能な安価な水資源が身近に存在し、その恩恵を受けて発展してきたが、近年は水需要の増大や、河川改修進捗に伴う河床低下等、利水に対する影響が生じはじめている。十勝川本川においては、大規模な発電計画案による大幅な減水区間の出現や、広大な農地に対するかんがい用水開発計画が関係機関から打出され、札内川においては、帯広圏の上水道用水確保、かんがい用水、発電等を目的とした多目的ダムの建設計画が地元の幅広い層から強く要請されている。このような情勢の中で十勝川工事実施基本計画の変更に伴い、十勝川河川維持流量が設定され、この維持流量の基本的考え方で各地点の水資源開発、利水計画は立てられるが、地下水管理、特に帯広周辺での地下水障害の防止、適切な地下水開発は重要なことがらである。本論文は、十勝川におかれている諸状況を鑑み、特に札内川扇状地の水理地質調査、同時流量観測、地下水位観測結果を基に、河川表流水と浅層地下水の水収支の関係を把握し、札内川扇状地水収支モデル作成の基礎的段階のものである。この研究の最終目的は札内ダムを中心とした、札内川低水流量管理の指針の作成と、帯広を中心とする十勝構造盆の深層地下水解明の基礎資料の収集にある。
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