河川と流域、そしてそこに住む人々の係り合いは洪水災害だけでない。水利用を通しての結びつきはより切実な日常的な問題である。水は生物生存の根源であるだけでなく人々のあらゆる活動にとってもそれは欠くことのできない資源である。このため人々はひたすら河川とのより良き共存関係を願いそのために営々と進めて来たのが治水事業である。しかしながら、永年にわたって築き上げたこの共存関係も近年の著しい経済社会の進展とそれに伴う国土の開発などにより急激に変化しつつある。豊富良質といわれた河川水や地下水の汚染、枯渇化、河川流域の急激な変化がもたらす洪水災害の態様の変化は、治水事業の進展にかかわらす、洪水災害は依然として増大傾向にある。今日、河川行政の主要課題は河川と人間社会との共存関係のギャップをいかに埋めるかが最大の課題であろう。 しかしそれは、ただ現状の追認に留まり将来の展望なしには進めることは出来ないものである。 河川はその流域の姿を忠実に反映するという。河川の問題の多くはその流域の問題にほかならない。 ここに流域を含めた面的な総合河川計画の必要性があるといえる。前期の築定に基くテーマの「沙流川総合河川計画」については、沙流川における治水及び利水計画の基礎条件を策定するための基礎資料として検討されたもので、第1報(昭和51年度)において「総合河川計画」の基本的考え方及び、問題点の提起を第2報(昭和52年度)において「流域の各種機能の評価」の方法を主として報告し、第3報(昭和53年度)においては「各種機能の総合的な整合性をチェックしつつ流域のあるべき姿を求める方法」についてその要旨を述べるとともに、当の「総合河川計画」策定作業の一環としてほぼ同様の手法を用いて実施した「流域容量の算定」について報告したが、本報告はこれ迄の総括として「流域のあるべき姿と期待する機能」を定め、それに対応した「河川計画の基本方針」について報告するものである。 |