河道計画の立案に当っては、その河川の実態を把握し、高水すなわち洪水の流れを予測することが必要となる。一般に計画規模に近い洪水を経験した河川は少なく、また洪水があった河川でもその記録が不充分である場合が多い。したがって、その予測手段として水路模型実験が行われる。 しかし、模型実験は単に幾何学的相似形を作るだけでは不充分で、同時に多く境界条件を合せる必要がある。条件設定が困難のために限定された条件のもとで実験し、他の手段と併用して検討が行われる場合もある。この境界条件のなかでむずかしい問題の一つに流水抵抗がある。流れの抵抗は河床形態と密接に関係し、河床形態は水理量に応じて変化する。また、高水敷の抵抗特性が不明確な河川が多い。もう一つ困難な問題として河道の変動性があげられる。洪水時には活発な河川砂礫の運動とこれに伴う河道横断の変動が起こっていると推定されるが、模型実験において、固定床ではこの効果が無視され、移動床ではさらに多く因子が関係するために確定された相似則がなく、より限定された条件下での実験とならざるを得ない。これらの問題は、洪水の実際河川での測定値があると、これを模型上に再現しながら各種条件を調整することによりかなり解決される。また、同時に実験結果の解釈及び現地への適応に当り実測地は非常に有効である。特に石狩川等大河川の下流部は河床材料が小さくかつ水深が大きいため、河床形態を支配する重要な因子の一つと言われている水深と河床材料粒径との比が非常に大きく、この比を模型上に作ることが出来ないことなど、模型実験実施上の問題点が多い。この様な背景も一つの理由として、石狩川河口を含む下流部の河道計画の検討を水理模型実験を併用しながら進めるに当り、洪水時の諸現象を測定する計画が当てられ、融雪出水を対象とすることとし54年5月8日実施した。この観測は、石狩川大型水理実験委員会の諸先生の御指導御支援を受け、石狩川開発建設部工務第1課との協力により行われたものである。 |