沙流川総合開発事業は、二風谷ダムおよび平取ダムの2ダム1事業として昭和5 7年より建設に着手し、平成9年度には二風谷ダムが完成している。本報告の対象となる平取ダムは、昭和57年の事業着手時、二風谷ダムとともに「建設省所管事業に係る環境影響評価に関する当面の措置方針」に基づいて環境影響評価報告書を作成し、「北海道環境影響評価条例」による法手続を完了しているため、平成11年6月に施行された「環境影響評価法」に基づく手続は必要ないこととなっている。しかし、条例による環境影響評価の手続から20年以上が経過していること、また、近年は国民の自然環境保全への意識が高まるとともに、環境省や北海道からは希少動植物の新たな知見(レッドデータブック等)が示されてきたことから、平成11年度より新たな知見に基づく環境調査を実施し、平取ダム建設による周辺環境への影響予測を行っている。その新たな知見に基づく環境調査を実施している中で、近年、特に注目を浴びている対象のひとつに猛禽類がある。猛禽類は、鳥類の起源として比較的古いグループに属し、環境の変化に敏感であること、また、主に肉食性であり生態系の上位に位置していることなどから、特に保護が必要とされている。希少動植物保護の観点から営巣位置等を示すことは出来ないが、平取ダム建設予定地の周辺においてもクマタカやオオタカを始めとする希少猛禽類の生息を確認しており、繁殖事例も確認している。そこで、ダム建設事業による希少猛禽類への影響を科学的に予測することを目的とし、額平川流域における猛禽類の営巣や採餌の適地をGIS( 地理情報システム:Geographic Information System)を用いて推定する手法の開発を行っている。本報告は、その手法を開発する上で必要となった自然環境情報の一元化に対する試みとその有効性や課題について事例紹介するものである。 |