十勝地方には風害防止を目的とした防風保安林が広く形成されており、帯広・広尾自動車道はこれらの樹林帯を横断する形で建設が進められてきている。これらの樹林環境はコウモリ類等の小型哺乳類にとって良好な生息・繁殖する場となっており、樹林間を広い範囲で移動し交流していることが知られている。従って、道路建設に伴う生息域の分断は、コウモリ類等の生息域の縮小化を引き起こし、十勝地方の田園生態系の持つ多様性を損なうことが懸念された。そこで、他事業等でコウモリ類の利用を確認した事例があるボックスカルバートを設置することにより移動経路の確保を目的とした保全対策を実施した。しかし、コウモリ類の保全事例が少ないことから、建設にあたっては、大正10号保安林を対象にコウモリ類の捕獲調査を行い、生態的特性、行動パターン等を推測し、その結果を基にエコボックスカルバートの設置位置、構造などの検討を行った。さらにエコボックスカルバートの設置後に、コウモリ類の利用状況の確認調査を実施し、保全対策の効果について検証を行い、その有効性を明らかにした。本報告は、今後の道路事業と野生動物との共生を図った事業展開に向けた資料として、紹介する。 |