豪雨により、山地斜面で膨大な斜面崩壊が発生した河川流域では、大量の土砂が河道に流入した結果、土砂移動が活発化しやすくなることは経験的に知られている。国土交通省の公表資料 によれば、今後100年で気温の上昇、積雪量の減少、豪雨の頻発が予測されており、河川の土砂動態も今後なんらかの影響を受ける可能性がある。特に、河川横断構造物維持の観点から、流域からの土砂動態を予測し対策を考えるツールが必要となる。流域規模での土砂輸送モデルは、これまでに橋本らや、市川ら等によって研究が行われているが、現場の技術者が用いるには煩雑である。一方、Wongsaらは流域全体での流水、土砂輸送の追跡に加え、斜面域での降雨による土砂生産量の算定が可能な物理モデルとして、流域を土砂生産域としての斜面と土砂輸送域としての河道に分けた、流域スケール数値モデル(Wong saand Shimizu等)を提案している。本研究では、Wongsaらのモデルを北海道日高地方額平川流域に適用し、同一流域における粒径分布の差異によるモデル出力の違いを明らかにするため、2003年8月洪水を対象とし、粒径区分別の土砂輸送特性について検討を行った。 |