乳牛ふん尿スラリーを主原料としたメタン発酵は発酵槽内の維持温度の違いによって、「低温発酵(20℃未満)」、「中温発酵(37℃前後)」、「高温発酵(55℃前後)」に分類できる。このうち、一般的特徴として、中温発酵は平均滞留日数を25~ 30日で稼働させ、発酵の安定性に優れている。一方、高温発酵では滞留日数が15~ 20日程度と短いため、施設規模が同一であれば低・中温発酵に比べふん尿処理量が多く、エネルギー取得量も多くなるという利点がある反面、加温エネルギー量が多く、温度変化による影響が大きいため、稼働が難しいとされている。海外における例として、デンマークでは1998年現在、稼働中のプラント20基中、11基が高温発酵を採用している。国内では高温発酵を採用したプラントは数例報告されているものの、発酵槽の容量が200m3以上の大型の物はない。北海道内で稼働している嫌気発酵施設の大半が中温発酵を採用しており、現時点での実用規模における高温発酵の施設数は少なく、その発酵条件に関しては不明な点が多い。そこで、通常、中温発酵で稼働している別海資源循環試験施設に於いて2005年1月~3月の冬期間に高温発酵の実証実験を行い、実プラントにおける高温発酵の特徴を確認した。その結果をもとにエネルギー収支に関するシミュレーションを行い、エネルギー的に効率的なプラント稼働方法を考察した。 |