官庁施設の整備にあたっては、施設として必要な性能を満たしつつ、近年の厳しい財政状況や少子高齢化を受け、行政需要の変化に対応することが求められている。このような状況の中、昭和40~50年代にかけて増加した建築物が、現在更新時期を迎えており、また、平成元年頃から急増しはじめた施設も、今後数十年のうちに、一斉に更新時期を迎えることが予想され、年代別に大きな波動があることが分かる。更新にあたっては、設計・工事に関わる自由度が高い新営( Scrap & Build =解体・新築) か、既存の諸条件による制約を受けやすい改修( Stock & Renovation= 保存・再生) とするか、比較、検討が必要である。しかし、前述の状況より、従前のような新営を主流とするのではなく、改修により必要な性能を確保しつつ、良質な官庁施設を整備していくことはもはや必然であり、限られた予算でも密度の高い設計で、新営と同等に価値を付加することが、今後重要となる。本研究では、入居官署( 函館税務署。以下、「税務署」という)が退去した後の官庁施設( 函館公共職業安定所)を有効活用すると共に、隣接する庁舎( 函館地方合同庁舎)の狭あい解消を図った事例をもとに、その再生の過程を報告し、今後の課題を提起するものである。 |