藻場は、藻食動物(ウニ等) の摂餌場、稚仔魚の産卵・保育場、小魚を食べる大型魚類の蝟集場として重要な機能を果たしている。また、最近では水質浄化機能や地球温暖化の原因である二酸化炭素吸収作用も確認されている。しかしながら、北海道南西部日本海側では、藻場が形成されない磯焼け現象が深刻な問題となっている。磯焼け現象は、気象・海象の変化に伴う水温の上昇・貧栄養化、激浪による脱落、ウニなどの植食動物による食圧、生活・産業汚水の流入に伴う汚染、富栄養化、照度低下、浮泥堆積など考えられるが、これらが複合的に関与することもあり、実体は充分解明されたとは言えない。しかし、北海道日本海側の磯焼けは、異常な海況変動にともなう不適な環境が起因して発生し、ウニ等の藻食動物の摂餌圧が大きく関わっているとされる。一方で、港湾・漁港施設等の整備を行う際に、周辺自然環境と調和を図るために、小段を設けるなど積極的に藻場創出機能を付加する工夫がなされるようになった。江良漁港西外防波堤においても、背後に浅場領域を創出し、水生生物の棲息に寄与できる機能を付加した自然調和型断面になっている。建設当初は、基質面が新しいこともあり、防波堤背後にコンブ藻場が創出されたが、整備から約8 年経過した現在では、藻場が形成されない状態となっている。原因は、傾斜堤の背後にあることから流動環境が穏やかで、ウニが高密度に生息する場であるため、ウニによる食圧が大きくコンブの幼芽が着生・発芽する春季(2、3月頃) にウニ類による摂餌の影響を受け、藻場が形成されないものと考えられた。このような環境下において、藻場を形成させる方策として、ウニの食圧を低減させる動揺式人工基質を考案した。この基質を、背後小段上に設置し、海藻着生基質としての有効性の実証実験を行った。 |