近年、産地偽装や食中毒事件などを背景に、国民の食品や食べ物に対する関心が高まっている。特に、刺身等生食としても消費される水産物においては、安全で安心なものを産地から供給する基盤や体制づくりが急務となっている。北海道は全国の約1/4を占める漁業生産基地としての役割を担っており、直轄の漁港整備においても衛生管理型漁港づくりが重要な施策として位置づけられ、事業を進めているところである。一方、事業の推進にあたり、国民の安全安心な食生活に貢献している点の具体的な効果が必ずしも明らかにされていなかった。この為、事業に対する生産者の理解が進まない、事業計画時において適切な事業の効果を示すことが出来ない等といった問題が多く生じている。特に、事業の便益算定については、主に生産者の労働環境の改善効果等により把握され、安全安心の便益そのものについては算定されていなかった。本来、安全安心な水産物の供給は、国民全体の便益に直結するものであり、事業評価の中において適切に表現されるべき重要な事項である。本報告は、上記に鑑み、衛生管理型漁港について水産物の流通段階、漁港整備による価格形成効果の把握等の分析を行い、新たな事業評価の手法を確立するものである。 |