上部斜面堤は堤体上部を斜面構造、堤体下部を直立構造とした防波堤構造である。この構造形式は斜面部の効果によって水平波力が低減されるとともに、斜面部に作用する鉛直下向きの波力によって堤体の滑動抵抗が増すために経済的な断面となることが知られている。しかしながら、斜面部の影響によって波高伝達率が増大するため、港内静穏度等を考慮して堤体天端高さを決定する必要があることが「港湾の施設の技術上の基準・同解説」において指摘されている。この構造形式の水理特性についてはこれまでにいくつかの研究が行われている。例えば、細山田ら(1994) は系統的な水理模型実験を実施して森平ら( 1979) の算定法を拡張した波力算定法を提案している。また、高橋ら(1997) は水理模型実験から斜面部の傾斜角や斜面下端水深などの影響を考慮した波高伝達率算定法を提案している。しかしながら、北海道内においては施工例がなく設計法についてもあまり知られていない。また、基礎マウンド被覆材の安定性については報告例が少なく、安定質量の算定法については明らかになっていない。現在、網走管内の宇登呂漁港島防波堤において上部斜面堤の適用が検討されていることから、本報告では上部斜面堤に関する水理模型実験および数値波動水路を用いた数値計算を実施して、その波力特性、基礎マウンドの耐波安定性および伝達波特性について報告するものである。 |