従来、北海道内の水田用水施設の多くは、水路システム全体が開水路のものであった。この型式の水管理は、供給主導型であるため、各用水期内では支線水路の分水量の変動が小さく、送配水管理は安定していた。しかし、近年では、支線水路以下のパイプライン化が徐々に進んできた。その場合には、水路システムは複合水路の型式となる。既往の調査によると、支線パイプラインの流量は早朝に増大する台形型のパターンを有し、夜間の流量はピーク時間帯に比べてわずかである。このように極端な分水量変動が、道内の全てのパイプライン支線で生じるとは限らないが、支線水路のパイプライン化が進めば、支線パイプラインの流量変動の影響を受けて、幹線水路下流部の流量が早朝に少なくなり、相対的に下流に位置する水田への供給水量が特定の時間帯に不足する可能性がある。そこで本報告では北海道内のA幹線用水路を数理モデルとして構築して、将来的に支線のパイプライン化が進んだ場合を想定し、不定流解析によって幹線水路の水深・流量および分水量の1日の変動について検討する。また幹線水路水深の実測値から、現在の水深の変動状況について検討する。なお、土地改良区での聞き取りによると、実際のA幹線用水路では支線パイプラインへの分水量が期別用水量を大きく上回らないようなバルブ管理がなされている。それゆえ、この報告は支線パイプラインへの分水流量の上限を何ら制御しない場合を模擬したものであることを付記する。 |