サロベツ地域の泥炭地は、国民の食糧確保、生活の場の確保のため、主に戦後の開拓入植を契機として開拓が始まり、泥炭地の原野は排水路の整備や暗渠排水、客土等の実施によって牧草地に造成され、酪農をこの厳寒の地に基幹産業として定着させた。一方、およそ4~ 5千年ほど前から植物の残遺体が堆積して形成されたサロベツ泥炭地は生命ある土地とでもいうべきもので、湿原域は様々なタイプの湿原形態を示し、貴重、希少な野生動植物が生息するなど独特の生態系や生物多様性が高く評価され、昭和49年には利尻礼文サロベツ国立公園に指定されている。しかし、その湿原も地下水位低下による乾燥化が進み、高層湿原域にササ類が侵入するなど、様々な要因により湿原環境の変化が見られる。現在のサロベツ地域は、泥炭地に展開する農業的利用と湿原を主とする自然公園としての保護・利用という2つの異なる土地利用状況が併存している状況にある 。北海道開発局は環境省と連携し、地元関係機関等から構成する「サロベツ再生構想策定検討会」を平成14年5月に設立し、国立公園であるサロベツ湿原と隣接する農地(の共生を図るための「サロベツ再生構想」を平成16年9月に策定した。再生構想の具現化に向け、自然再生推進法に基づく「上サロベツ自然再生協議会」を平成17年1月に設立し、共生に向けた全体構想について検討を進めている。 |