2004年12月、インドネシアのスマトラ島沖を震源とするMw(モーメントマグニチュード)9.0の大地震が発生し、死者・行方不明者を合わせて30万人以上という大きな被害をもたらした。地震により発生した津波は、停泊していた船舶を飲み込み、構造物を破壊し、さらに危険な濁流となって市民や建物を襲った。その様子は各種メディアでも取り上げられ、全世界を震撼させた。日本においても、いくつかの大規模地震の発生が危惧されており、これらの地震による津波発生の危険性が指摘されている。2005年6月、内閣府中央防災会議の専門調査会は、500年間隔で発生する地震津波が釧路地方に来襲する場合、最大10m以上もの高さになるとの試算を示した。前回の500年間隔地震から既に約400年が経過しており、釧路地方における津波対策は喫緊の課題となっている。これまでの津波防災対策としては、防潮堤や水門により、津波そのものを防ぐ手法が一般的に採られているが、前述のスマトラ島沖地震津波での被害の教訓より、津波によって運ばれる漂流物による被害を防ぐことが防災上、極めて重要であることが分かってきた。本研究は、地震常襲地域に位置する釧路港を対象に、津波により人命や財産に危害を与える可能性のある漂流物や、その衝突により被害の拡大をもたらすことが危惧される石油タンク等の危険物について現地調査を行い、津波防災上の課題を明らかにするものである。 |