1960年代以降の港湾整備の進展に伴い、港湾ストックが年々増加している。これらは、時間の経過とともに老朽化がみられ、施設の機能・安全性の低下が懸念される。施設の機能を良好に保持するためには、施設の更新が必要となる。しかし、施設の更新にあたっては、経済・社会情勢の中、既存港湾ストックを有効活用し、少ない投資で計画的なライフサイクルの延命化を図ること、および施設の劣化対策を効率的・効果的に行うことが必要である。このため、当該施設の機能が十分に発揮できているかを確認すること、および予防的措置を早急に講じ施設の安全性の向上を図ること等を目的に、点検が実施されてきているところである。特にエプロン下の空洞化は、エプロンの陥没につながる恐れがあり、岸壁の利用が制限されるだけでなく、人命にかかわること、および経済的な損失を引き起こしかねない現象であるといえる。さらに、目視点検では確認できないことが多いことも特徴であり、空洞化調査の重要性はきわめて高いといえる。しかし、係留施設における空洞化調査の着目点については、既往の知見が少ないのが現状である。本報告では、このうち、施設の安全性の向上に着目して、係留施設のうち、矢板式岸壁におけるエプロン下の空洞化について既往の文献等を基に整理するとともに、今後のエプロン下の空洞化調査の着目点について考察を行うこととした。 |