軽量盛土工法の材料の一つである発泡スチロールブロック(以下:EPS(E・xpandedP・oly-S・tyrol)ブロック)の特徴は、軽量性、耐圧縮性、耐水性、自立性に優れている点である。そのため、軟弱地盤上の盛土材や橋台、擁壁の裏込め材として建設工事において広く利用されている。「EPSブロックを用いた軽量盛土工法」は、工期の短縮や道路完成後の残留沈下の防止などに有効であることから、札幌市では1985年に軟弱地盤対策として日本で初めて使用されて以来、2004年末までで工事件数約150件、累積施工量約10万m3の実績がある。その一方でEPSブロックはポリスチレン系の合成樹脂製品であるため、芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、ケトン類、エステル類などの鉱油系薬品に溶解しやすい性質をもっている。札幌市で「発泡スチロールを用いた軽量盛土工法」を採用した道路において、鉱油系薬品の土壌への流出によるEPSブロック溶解の被災事故が少なからず報告されている。今後もこのような被災事故が発生する可能性を否定することはできない。そのため、こうした被災事故の発生を抑制・防止し、また発生した場合においても速やかに対応・処理できる体制を整えておく必要があると考える。本文は、札幌市において発生した被災事例をもとに、事故が発生した場合の調査、復旧および対策工法と「EPSブロックを用いた軽量盛土工法」の設計・施工の留意事項を提案するものである。 |