近年、環境との調和を図る、あるいは新たな水産生物の成育環境を提供する目的で、エコグラウンド防波堤に見られるような新構造物形式の施設が建設されるようになった。また、衛生管理の必要性から、清浄海水の汲み上げパイプラインが敷設されつつある。我が国において唯一の氷海域であるオホーツク海沿岸における港湾は、サハリン大陸における石油天然ガス開発に伴うロシアとの交易拡大の拠点、防災基地、避難港の役割の他、冬季の漁業・養殖産業のさらなる活性化・発展のため、将来的には冬季を含めた港湾・漁港の通年利用を可能とできるような新構造形式の施設が建設されることが期待される。しかし、冬季に流氷が来襲するオホーツク海沿岸においては、特にアスペクト比(構造物の幅と氷厚との比)小さい構造物、ジャケット式の構造物、また、近年整備の進められている高天端マウンドを付加した環境配慮型の防波堤などの耐氷設計には流氷の及ぼす外力を考慮しなければならない。そのため、寒さや氷に強い港湾整備には、構造物の設計指針や設計条件をあらかじめ整備しておく必要がある。本報告では、氷海域における耐氷構造物の設計の概念や方法論、また設計条件のひとつであるオホーツク海沿岸部での流氷の動きや喫水深について検証するとともに、今後の氷海域での社会資本整備に係わる技術的課題について報告するものである。 |