北海道の治水事業は、歴史が浅く、改修方式も蛇行河川のショートカットや放水路の開削が先行し、築堤は、都市部を洪水から防護する部分的なもののみであった。しかしながら昭和36年、37年に大洪水氾濫が連続したことなどが契機となり、築堤工事が大巾に促進され、近年になって、未だ暫定断面の箇所も多いが、漸くおおむね連続し、概成してきた。未施工区間が多く、不連続の状態では、築堤としての効用が少なく、また、破堤による災害もなかったが、築堤が連続することによって、洪水のポテンシャルエネルギーを高める作用をしており、この意味において、既設築堤の安全度を、さらに確認することが治水上の重要な課題となってきた。北海道の築堤の特質を、2,3挙げると、まず北海道には、20万haにおよぶ泥炭地が主要河川の流域に分布しており、したがって、築堤も、この軟弱な泥岩地盤上に築造されたものが多く、スベリ破壊に対する強度が低いこと、また、数多い蛇行部のショートカット箇所の旧川の締切築堤は、盛高も高く、川の跡であり、川は自然に戻る性質を有しており洪水時の弱点となりやすいこと、また、火山灰地など透水性の高い箇所の築堤も多く、漏水の心配があることなどである。この調査研究は、北海道開発局の技術研究発表会の指定課題として、取り上げられたもので、道内各地のあらゆるケースの既設築堤について、品質の実態を明らかにし、その安全度を確認すること、また、所定の安全度を有する築堤は、どのように設計施工されるべきかを、一層深く、検討するものである。今年度は、調査対象築堤の完成断面に対して下記の点について検討した。1.河川水位が上昇し、浸潤線が発達したときの裏ノリのスベリ破壊に対する安定、2.河川水位が急降下したときの表ノリ面のスベリ破壊に対する安定、3.漏水量の大きさならびにパイピングの可能性、4.軟弱地盤上の築堤の沈下とスベリ破棄に対する安定なお、この調査は、47年度を初年度とし、49年度に最終成果を得ることを目標としている。 |