本稿の「計画降雨に関する研究」は、建設省技術研究会の指定課題として、昭和45年度を初年度に各種の検討を重ねてきた。本研究もいよいよ最終年度を迎え、特に選定されたテーマは計画降雨の解析手法の一つとして用いられている「実績降雨の引伸しによる計画降雨設定法について」である。このようなテーマを取上げたのは、引伸し倍率にかかわらず降雨の空間的な配分の割合は実測のまま保たれ、このために、時として特定の部分流域に過大な量の降雨を集中的に与えることが起り、想定すべき現象としての異状性や、全流域の計画と部分流域の計画との不斉合が生じるためである。そこで、データー数等の制約もあり、石狩川流域をモデルに選定し検討を進めることとした。石狩川は北海道全面積の5分の1、14,300Km2の広大な流域面積を有し、北海道の中央部にそびえる石狩岳(1,980m)に源を発して、大雪山の東側を迂回して1,000~2,000mの谷底平野を形成して上川に至り、忠別川、美瑛川等の葉状河川の中に旭川盆地が開ける。その後、景勝地神居古潭の渓流を経て石狩平野を形成し、平野部に入ってからは雨竜川、空知川、幾春別川、夕張川、千歳川、豊平川等多くの支川を合流して、石狩町で日本海に注いでいる。石狩川の年間流出量は約150億屯であり、春の融雪期には79億屯余で全流出量の5割近くを占めている。石狩川沿岸の平野部では、北海道内でも概ね穏和な気候に恵まれ、地味肥沃で道内での主要な農産地となっている。石狩川流域の雨量観測所中、6観測所を選定し解析を進めた。また、流量解析地点は江別市の石狩大橋を採用し、流域平均雨量はティーセン法により算定した。 |