盛土材料の使用に当っては、主にその材料の物理試験や力学的試験が実施され、またこのような試験の結果は盛土築造上最も基本的かつ重要なことである。しかし近年、各種建設事業の進展にともない、このような試験の基準にあった良質な盛土材料が次第に減少しつつあることと、経済的な面から、現地産材料の活用による事業費の節減が一般的に期待されていることもあって、多種多様の品質の盛土材料が次第に用いられてきているのが現状のようである。このような材料において、ひとくちに盛土材料といってもその種類は千差万別であり、また対象が天然材料である以上、その性質は多彩である。したがって使用に当っては、このような天然材料の特性を的確に把握する必要がある。実際、この点にこれまで盛土材料に対する考え方に多少の変更をせまられる問題が含まれていると思われ、これ迄の高密度、高強度を得やすい施工面と安定性からの観点と同時に、材料そのものの化学組織の吟味も十分になされることが望ましいと考える。勿論これまでも風化土や化学的性質に対する認識はあったが、材料の強度に影響を及ぼす物理的要因に基づく変化に主眼がおかれるか、また化学的検討もあく迄材料変質にともなう密度やセン断強さの低下など安定性からの見方が支配的であったことは否めない。ここに、盛土材料として土砂、岩石とは、究極的に各種化学的元素の組合せ、つまりいくつかの元素の化合物ないし、その混合物であり、含有化学元素の種類とそのおかれた条件によっては、予期しない変化を示すことがある。したがってこれ迄ややもすれば見すごされてきた盛土材料による環境に対する影響について十分な配慮をしていくことが、土木技術者の必須の条件となってきていると考えられる。この報告は、鉱山のズリを道路盛土材料として用いたことに起因する周辺地下水の水質変化の事例について、一資料を提供することをも目的とするものである。 |