環境破壊、環境汚染(水質汚濁、大気汚染)等、事業活動に伴う公害発生に世論のきびしい批判が高まっている中で、公害対策基本法が改正されて、同法12条には自然環境の保護がうたわれ、更には同法体系の中で「海洋汚染防止法」が制定された。河川、湖沼、海域には公害対策基本法に伴う水域類型の指定、排出水については水質汚染防止法による排水基準が制定されて環境汚染の防止対策は、今や緊急の社会問題となっている。このような情況下で、我々の行う港湾建設工事も例外となり得なく、工事の遂行には種々の厳しい条件が課せられるようになった。特にポンプ浚渫工事は水底土砂を攪拌するので海面を汚濁させ易く、更には埋立用地造成工事では余水吐よりの溢流水に含まれる浮泥が域外に流出拡散して水域を汚染させるので、これらの防止技術の確立はポンプ浚渫工法の焦眉の問題である。能取漁港では漁港建設に伴う-7.0M浚渫がポンプ浚渫船により昭和47年度から開始されたが、能取湖周辺を含むほぼ全域が網走国定公園指定区域であることから工事には種々の困難な条件が付せられた。即ち湖水周辺の景観の保護、群生植物の保護、湖水の水質汚濁防止、湖内の漁業資源の保護等、いわゆる自然環境をそこなわないきれいな施工法が要求された。本稿では特に同浚渫工事の中で浮泥の拡散防止対策として行った沈降促進剤の添加についての予備実験および施工経過について記述する。 |