最近の急激な経済発展は、河川後背地にも土地利用の高度化、人口の集中、個人所得増による資産増、生活水準の向上として現われてきている。これにともない、社会発展のための基盤整備や人心の安定のため、防災の安全度の増加が必要となり、計画高水流量の改訂や河道計画の見直しが行われている。この対処策としてダムによる洪水制御、水資源確保、河道流下断面保持のための河道掘削、築堤の整備などが主なものであり、その中でも低水路拡幅、河床掘削低下が多くの河川で盛んに行われている。河床を低下させ低水路断面を大きくすることは、防災の面からは、河岸の安全度増加、洪水時の流心固定化、内水排除の改良などの効果があり好ましいことであるが、その反面、利水の面からは、河川周辺の地下水低下、取水の困難化などあまり好ましいことばかりでもない。さらに都市近郊の河川においては、近年、直轄河川環境整備事業の進捗により、低水路を高級護岸により固定するような二次的改修も多くなってきている。このような背景から、沖積平野を貫流する河川や扇状地のような砂利や土砂の堆積区域を流下する河川、いわゆる移動床を有する河川の河道計画は、最近の重要かつ難解な課題の一つである。移動床においては、水理量の諸条件下において種々の河床形態を現出する。砂レキ堆(交互砂州)はその一つであり、扇状地河川、比較的勾配が急な河川、河床幅が水深に比して広い河川などにおいて広く見られ、よく目にする河床形態であるが、現在のところ、その機構解明は十分に成されていない状態であり河道計画における低水路平面形状などは、経験的又は自然河道を尊重した方法で決められてきた。しかしながら、砂レキ堆の移動は洪水の疎通を妨げたり、水当り部分にエネルギーを集中させ護岸や河岸を決壊させたり、砂州を形成し取水施設の機能を停止させ、分合流を阻害し、舟運を困難にしたり、作工物基礎の洗掘深掘れを生ぜしめたりするため、河道及び作工物維持、防災上非常に厄介なものである。砂レキ堆の移動を阻止することの重要性は、このような観点から十分理解することができる。今回の研究テーマは、河道の平面形状によりこれを阻止する方法を見出そうとするものであり、形態学的、現象論的裏付けに的をしぼっている。 |