寒冷地の道路橋は、凍害単独および塩害との複合劣化による被害を受けやすい厳しい環境下に曝されており、コンクリートの劣化による耐久性の低下に伴う鉄筋腐食の加速が懸念される。凍害は、現時点では、劣化の進行を精度良く予測することが難しい。このため、コンクリート標準示方書「維持管理編」では性能低下の度合に応じて対策を検討する区分B(事後保全型)に位置づけられている。一方、北海道開発局が管理する橋長15m以上のコンクリート橋の数は、高規格幹線道路を含めると平成17年4月の段階で約820橋、総延長で約62kmに及ぶ。また、鋼橋においても、地覆、面壁、床版、下部工にコンクリートが使われている例が多い。これら多くのコンクリート構造物の更新は、昨今の財政事情を考えると極めて厳しい状況にある。このため、劣化抑制工法の適用など予防保全型の維持管理へ転換を図って道路橋を長く使用し、ライフサイクルコストの縮減に努めることが重要である。劣化抑制工法の一つに表面含浸工法がある。これは、被覆材とは異なり、コンクリートの表層に特殊な成分を含浸させ、表層の品質を高め、水や塩分の浸透を抑えることで劣化の発生・進行を遅延させ、部材の延命を図る工法である。施工費が比較的安価で工期が短く、構造物の質感を変化させない等の長所を有している。近年、北海道開発局の工事においても、コンクリート部材の性能の保持・持続を期待し、道路橋の地覆や面壁に表面含浸材が適用される事例が増えている。しかし、現在、表面含浸材は100種類以上の製品が市販されていて、明確な製品の選定方法、施工に際しての合理的な使い分け方、実環境下での効果の持続性など、検討すべき課題も多く残されている。このような状況から、筆者らは、実際の寒冷地における表面含浸材の効果の持続性を明らかにすることを目的に、開発建設部の協力を得て、北海道内の5橋において表面含浸材を試験施工し、追跡調査を行っている。本論では、美幌橋で行っているの表面含浸材の試験施工2年目の評価について述べる。 |