道路橋の伸縮装置は、床版同様直接輪荷重を支持するため、橋梁構成要素の中でも劣化を受けやすい部材である。特に積雪寒冷地における伸縮装置は,凍害や塩害および除雪作業に伴う衝撃作用などの過酷な条件下にあり、橋梁部材で最も早く劣化損傷が発生する部位である。近年、損傷による伸縮装置の取り替え工事が急増しており、将来のLCC 削減に向けては、上述した現状を踏まえた疲労耐久性および耐荷性の高い伸縮装置の開発・整備が課題であると認識される。そこで、(独)土木研究所寒地土木研究所と北海道大学との共同研究によって、平成17年度に積雪寒冷地における伸縮装置の損傷実体を調査し、その原因を踏まえた「寒冷地仕様伸縮装置(案)」の提案がなされた。引き続き、平成18年度は提案された伸縮装置の試験体を製作し、輪荷重走行試験機を用いた疲労耐久性の検証と必要に応じた改良を検討する予定である。このため、札幌道路事務所管内の橋梁において、試験的に寒冷地仕様伸縮装置を設置し、施工性能及び耐荷性能、止水性能,防食機能を把握するとともに、除雪作業時の衝撃作用や多様な実走行車両下における応力伝播性等のデータの蓄積を図り、寒冷地仕様伸縮装置の実地検証を図るものである。本報告では、寒冷地仕様伸縮装置の開発の基礎資料として調査収集を行った積雪寒冷地の損傷とその原因に関する実体調査結果と推定結果、ならびに試験施工に至るまでの経緯について報告する。 |