近年、台風や大型低気圧が北海道付近においても勢力を維持して接近する機会が見られ、港内護岸・岸壁、並びに道路護岸等での越波やこれによる水塊・水しぶきが作業者・歩行者・自動車交通などの安全を脅かす場合がある。これに伴い、護岸背後地の高度利用化や安全性の向上を目指し、護岸の越波流量を低減することが求められている。最も直接的かつ明確な手法として、護岸の天端高さを嵩上げすることが想定されるが、護岸の陰に隠れて外洋が見渡せないといった景観上の問題がある。また、既設の護岸に消波改良を施すことも考えられるが、地元漁業者との調整が困難な場合もある。そこで、本研究では護岸胸壁に「波返し工」を設けることによって、護岸の嵩上げを最小限に留めつつ、越波量の低減を図る改良手法を検討している。平成16年度に発表した報告では、直立護岸の胸壁上部端に三角形断面の波返し工を取りつけた際に胸壁に沿ってせり上がる水塊を岸側に返す効果の基本的性質について述べた。本報はこの報告の続報であり、従前の実験ケースで不足していたものを補い、天端高さの条件、さらに潮位条件や波高・周期を変えて水理模型実験を行い、これらの違いによる波返し工の効果および有効な適用条件を把握することを目的としている。また、波返し工に働く波力の検討を新たに行うことによって実際の設計での波力の取り扱いにおける注意点を提言する。 |