寒冷地の冬期における漁港及び港湾では、漁業従事者にとって、風雪等の厳しい作業環境に高齢化等の要素も加わって過酷な状況にあり、作業効率の低下や健康障害が懸念されている。こうした冬期就労環境を改善するために、北海道の漁港・港湾においては屋根付き防風施設の整備が行われている。現在、北海道開発局は、体感指標の1つ、気温と風速のみで計算できるWCIを用いて、防風施設の設置基準を定めており、この評価方法によれば防風施設設置による施設内の減風効果を定量的に把握することが必要である。著者らはすでに、代表的な施設形状・諸元の防風雪施設について施設設置後の施設内の風向・風速分布を数値解析により算定し図表化することによって防風施設の減風効果の汎用的な簡易予測手法を開発しており、これにより防風施設内の任意の地点における減風効果を推定することが可能である。しかし、こうした積雪寒冷地域における低温環境が作業する人間に与える影響を考えるうえでは、温度、湿度、気流或いは風、そして放射で決まる温熱環境により引き起こされる暑さ・寒さの温熱感覚が極めて重要であり、これには人の作業量(代謝熱量)や着衣量にも左右される。防風施設の設置の判断基準や、それによる改善効果を本質的に評価するには、与えられた温熱環境における人体の温冷感覚や温熱的快適感(苦痛の程度など)などを表す実体感指標に基づく定量評価が必要である。そこで、本論文では、こうした実体感の観点からWCIの適用性をレビューした。また、温熱生理学の分野では、オフィスなどの空調設計等を目的とし従来からいくつかの温熱指標が提案されているが、本研究が意図しているような屋外低温環境下においてそれらの適用性が検討された例は極めて少ないことから、予め抽出した幾つかの温熱環境指標の屋外低温環境下における適用性についても検討した。 |