河畔林の存在は、生物の生息空間、水域への有機物供給、人間活動との緩衝帯など、様々な公益的機能を有することから重要視されている。一方で、河畔林は出水時の河積阻害や流木化による下流への被害などの影響があるため、ある程度の伐採や密度管理が必要とされるなど、近年の治水事業では河畔林の取り扱いが議論されている。低地帯の河畔には、河道改修後に成立したヤナギ林が多く見られる。特に、北海道、東北に多く見られることから、そこでのヤナギ林に関する研究が多く行われてきた。一般に、ヤナギ類の種子は、早春から散布されること、短命であることから早期に裸地に定着し、発芽しなければ生残できないことになる。北海道では出水パターンとヤナギ類の種子散布時期との関係について、空知川(Niiyama 1990)、天塩川(長坂 1996)で調べられており、融雪出水の頃から種子散布がはじまること、その後夏期の出水が少ないことにより、定着した実生(みしょう)は生残できると考えられている。つまり、出水パターンがヤナギ類の定着に与える影響が大きいと考えられる。このように、北海道、東北では、出水パターンの影響によりヤナギ林が分布しやすいことが指摘されている。しかし、その分布状況をほかの地域と比較した研究はほとんど行われていない。このような地域による違いは、河畔林の維持管理を考えるうえで必要な視点と考えられる。そこで本研究では、全国23河川を対象にヤナギ林の分布状況について資料調査を行い、北海道が樹林化しやすい地域特性を持っているかを考察した。 |