滑走路延長に伴い、丘陵台地の北側に築造された盛土高65mの北側高盛土は、昭和63年度に完成している。その後、平成5年釧路沖地震による盛土体の亀裂発生、凍結融解作用による法面被覆土の脆弱化を起因とする降雨等表面水の盛土内浸入により、盛土体に安定性低下の兆候が現れてきた。北側高盛土の安定性回復に係る課題解決のため、学識経験者による「釧路空港高盛土工技術調査委員会」(以下、委員会という)が平成11~13年度に招集され、安定対策が審議された。この審議で地震時安定性が不足する法尻部は、法尻部に堆積分布する腐植土Ap層の土質定数を再評価するべきとされ、再評価した土質定数を用いて北側高盛土(全体)の改修直後条件時における地震時安定解析を行い、最小スベリ安全率が設計スベリ安全率1.0を下回った場合、安定対策を行うべきであるという委員会の答申を受けた。この後、平成15年度に法尻部の腐植土Ap層を採取して土質試験を行い土質定数を再評価して地震時安定解析を行った結果、地震時安定性が不足するため、法尻部の耐震対策を行うこととした。本報告では、平成18年度に工事着手した北側高盛土法尻部の既設グラベルコンパクションパイルを活かした深層混合処理工法による耐震対策(地盤改良)の設計概要を紹介する。また法尻部に堆積分布する改良対象土の腐植土Ap層(有機質粘土や泥炭を含む土層)は強度発現を阻害する物質(フミン酸など)を含み道内に流通するセメント系固化材では目標強度を発現できないことが判明した。このため目標強度を発現できる改良型セメント系固化材の選定経緯についても紹介する。 |