北海道の海岸は豊かな自然が残っている場所が多く、道内では13箇所が国立公園、国定公園、道立自然公園に設定されている。また、海岸でハマナスやエゾゼンテイカ等の草花が多数見られる観光的俗称の「原生花園」と呼ばれる場所も30箇所ある。このように北海道の海岸は優れた自然、景観が見られる場所であるが、一方で各地に設けられた漁場のように人々の生活に古くから身近に接してきた場所でもあり、燃料や生活のために植物が利用され失われてきている箇所も多い。さらに近年は海岸の浸食や大規模な土砂採取、過剰なレクリエ-ション利用によって海浜植物が失われた海岸が各地で見られるようになってきた。また、海浜植物の生育している海岸は、 砂の移動や堆積、塩風、乾燥等、厳しい環境にあり、一度消失した植物を新たに生育させることは容易ではない。本報告では、土砂採取で植生が失われた場所において、海浜植物を生育させるのに適した方法を開発するために、人工的に地形を作って海浜植物を植栽したり、 海浜植物の種子を外国産牧草種子と混播した試験を行った。試験の結,地形造成によって海浜植物の生育が良好になるとともに、北海道の寒さで枯れる牧草の混播が一部の海浜植物種子の発芽、 生育を助ける結果が得られたので、その結果を報告する。なお、本報告は、北海道立林業試験場と北海道環境科学研究センタ-、北海道立地質研究所および石狩市石狩浜海浜植物保護センタ-が共同で行った「海浜環境の再生を目指したミティゲ- ション手法の開発」から得られた成果の一部をまとめたものである。また、調査研究に当たっては、北海道開発局留萌開発建設部、幌延町、北海道留萌支庁、留萌土木現業所遠別出張所の皆様に多大なご協力をいただいた。厚くお礼申し上げます。 |