北海道は、四季折々の美しく雄大な自然景観や多様な野生生物が生息する豊かな自然環境を有しており、2005年7月には、知床が世界自然遺産に登録された。また、シーニックバイウェイ北海道の本格展開によって、各ルートでは景観の改善や様々な活動が取り組まれていることなどから、良好な自然環境や景観の保全・改善への意識が高くなっている。2005年6月に景観法を含む、いわゆる「景観緑三法」が全面施行され、公共事業における良好な景観形成が重要となっている。加えて、2007年1月には、「観光立国推進基本法」が施行され、国は観光地への来訪促進や環境及び良好な景観の保全を図る施策を講じることとなり、北海道を訪れる国内外の観光客の増加に繋げるため、美しい沿道景観の創出が必要となっている。一方、道路整備においては、本来、安全性や機能性とともに景観性、すなわち美しさは極めて重要な要素であり、古代より道路に求められる必要条件とされてきた。本研究では、必要な道路機能を確保した上で景観阻害要因を少しでも減らし、元来北海道が持つ、魅力ある景観を引き出すことによって、美しい沿道景観を創出することを目的としており、これを「引き算による景観創出」とした。具体的な取り組みとしては、北海道開発局などが実施した道路景観診断の調査結果からも沿道景観に与える影響が大きく、車両の衝突事故の原因ともなっている既存の道路附属施設や占用物件の状況を調査し、その有無による沿道景観への影響を把握する。その上で、道路附属施設等の整備コストや維持管理コスト、沿道景観の改善効果、機能確保とのバランスを踏まえ、沿道景観の向上を目的とした道路附属施設等の設置手法を考案し、最終的には、北海道における美しい沿道景観の創出と保全に関するガイドラインの作成を目指すものである。本報告では、道路附属施設等の設置状況と沿道景観との関係について現地調査を行い、特に道路案内標識と電柱・電線の状況と基準の考え方等を改めて確認し、「引き算による景観創出」の可能性について検討した結果を述べる。 |