我が国では、自然環境に対する国民関心度の高まりを背景に、1993年に環境基本法制定、1997年に河川法改正、1999年に環境影響評価法施行、2002年には自然再生推進法施行が行われ、公共事業における自然環境への配慮及び透明性が求められるようになった。また、近年は事業の実施前後で一貫した調査及び評価を実施し、その結果を公表していく「順応的管理」の必要性が高まっている。北海道西部の石狩川支流豊平川に架かる一般国道12号東橋は、苗穂交差点の拡幅事業に伴い、2004年から上流橋の架替え工事を行っている。本事業では旧橋解体、仮橋架設、新橋架設及び仮橋解体時に河道締切りと河川掘削が計画されたため、魚類への影響が懸念された。近年、自然再生事業等で河川環境の復元・修復のために魚類の生息場を再生する事例は増加しているが、現存する魚類の生息影響を回避・低減させるために改良施工を行った事例は少ない。本事業では、順応的管理の事例のひとつとして位置付け、橋梁架替え工事の実施前から魚類調査を実施し、工法及び保全対策の検討を行っている。そこで、本論文では、東橋架替え工事に際して実施している保全対策の一つであるサケ遡上対策により、サケの産卵に対する影響をどの程度回避できたかについて、調査結果から検証し、報告することとする。 |