近年、港湾・漁港構造物においては静穏度の確保や船舶の航行安全という本来の目的に加えて、良好な環境を保全し開発と環境保全を将来にわたって協調させていくために、自然環境と調和する機能が求められている。特に、良好な海域環境を創造するために、海洋生物の産卵場や索餌場あるいはそれ自体が水質浄化機能を持つ藻場が重要である。これらの背景から、釧路港島防波堤では浚渫土砂を利用して水深の浅い背後盛土を造成し、本体直立部の補強によるコスト縮減、越波による伝達波の低減などに加えて、浅場での藻場の創出を計画している。1998年6月には「環境と共生する港湾(エコポート)」として、モデル事業の認定を受け、構造上の安定性、施工方法、藻場造成手法を検討する「釧路港島防波堤施設検討委員会」を設置して具体的な整備手法の検討を進めてきた。この委員会の指導の基に2006年3月現在、本体工は全体計画延長2500mの内1250mが完成し、背後盛土部分は1600m の内、実証試験区間として100m が完成している。本報告はこの実証試験区間100m における、流速、光量子量・濁度、堆積砂、水温、塩分の物理環境について報告を行うものである。なお、海藻繁茂状況については本海域の代表種であるナガコンブが2年生の海藻であること、海藻の遷移状況を確認するために3年程度の調査期間が必要なことから後年度に報告を行う予定としている。 |