小樽港北防波堤は、高基混成堤の防波堤であり、平成17年度から改良工事に着手している。明治41年に1,289mが完成し、大正10年までに419mの延伸し、その後、起点側の埋立や上部工の嵩上げを経て現在に至る。昭和39年度には階段状に配置したコンクリートブロック(以下、捨塊)や捨石マウンドが被災し、原型への復旧工事を行っている。この施工後40年が経過して、港外側階段部の捨塊が移動し、隣り合う捨塊の不陸や捨塊が傾斜している状況が見受けられ、災害復旧工事出来型図とは港外側階段部及び法面部の形状が異なるため、施工前に潜水士の調査により新たに現況図を作成することとした。現況図の作成にあたっては、不陸がある状態で新たに方塊を重ねた場合にできる隙間は重ねた方塊の安定性を損なうおそれがあることから、捨塊個々の平面位置及び水深を計測し、捨塊の不陸を捉えた詳細な現況図を作成する必要があった。このような災害による被害が著しい施設や古い施設の改良等では、出来高図で現況を確認することが困難であり、現況図を作成するために格子状に深浅測量を実施する、又は潜水士による人力計測を実施し、面的な状況を把握して、現況の調査及び測量に多くの時間や労力を必要としている。この詳細な現況図を作成するためには、平成18年度の実績で、80mの延長に対しておよそ2ヶ月を期間を要している。当該施設では780mの調査を予定しており、現況確認作業の効率化が求められている。一方、深浅測量技術は目を向けると、音響測深が一般的に行われている中で、日本の海洋調査では、1983年にナローマルチビーム測深器が導入され高密度・高精度測量の時代に入り、1995年のRTK-GPSの導入により位置精度も向上している。さらに、今滝らによって、マルチビーム測深とGPSを併用して立体的な状況を把握するシステムが提案され、現況を確認する作業の省力化が期待されている。このような状況から、小樽港では現況図作成の省力化及び効率化を目的として、マルチビーム測深結果から現況図を作成する方法について検討を行ってきた。本報告は、小樽港の防波堤を事例として、マルチビーム測深結果を用いた現況図の作成方法を報告するとともに、潜水士による人力計測から作成した現況図と検証した結果について報告するものである。 |