2003年7月「美しい国づくり政策大綱(国土交通省)」が制定された、この政策大綱は、現在までの社会資本整備の量的な充足とそれらを成す人工景観の質的貧困を冷静に分析したうえで、「行政の方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切る(大綱前文)」と宣言し、公共事業における景観重視を鮮明に打ち出したものである。これを実現するため、大綱では美しい国づくりのための施策展開として15の施策を挙げており、その施策のうち、札幌開発建設部では「事業における景観形成の原則化」、「地域景観の点検の促進」に鑑み、一般国道12号及び36号において地域住民,各関係者にご協力いただき道路沿道景観診断を実施することとしたものである。従来実施されていた道路沿道景観診断では、評価の対象となる景観の構成要素をあらかじめ抽出し、それぞれの要素に対して段階評価を行う手法が一般的だが、この手法は診断者が意識していない要素まで評価を強制されることや、各景観要素が全体に与える影響が評価しづらいこと、さらには診断に時間がかかり診断者の負担が大きいことが問題であった。「事業における景観形成の原則化」に伴い、景観診断が今後ますます増えてくることが予想されることから、本調査では、これらの問題を解決すべく診断者に先入観を与えず、日頃から道路沿道景観に対して抱いている潜在意識を顕在化するための診断シートを検討・作成し、景観診断を行った。本稿では、新たな診断シートの検討・作成プロセスを紹介するとともに国道12号及び36号において実施した道路沿道景観診断の流れ及び診断シートの評価について報告する。 |