北海道は我が国の中で食料基地としての大きな役割を果たしており、第6期北海道総合開発計画(平成10年4月)においても、地球規模に視点を置いた食料基地の実現に向けた施策が位置付けられ、水産物に関して各種施策が講じられている。また、平成18年9月、国土審議会北海道開発分科会基本政策部会が「第6期計画の点検と新たな計画の在り方~中間とりまとめ~」を公表しているが、今後の北海道開発の取組の方向性として、グローバルな競争力ある自立的安定経済の実現のために、食料供給力の強化と食に関わる産業の高付加価値化・競争力強化が示されている。国家的な視点から北海道に期待される役割として、将来的にも、食料基地としての役割が重要な位置づけにある。このような中、北海道の港湾及び漁港は、全国の約3割の漁業生産量を支える水産物の陸揚げ拠点となっているほか、漁業活動を支える漁船の準備活動等の場など漁業生産基地として重要な役割を担っている。また、港湾及び漁港の一部には、水産物の産地市場や荷捌き所があるものがあり、漁業生産の場ばかりでなく、水産物流通の拠点としての役割も担っている。さらに、水産物やその加工品は、港湾の国内輸送ネットワークを経由して関東を始めとして広く全国に移出され、国民に対する安定した水産物の供給に大きく寄与しているほか、国際海上コンテナ輸送により中国や韓国などの諸外国へ水産物の輸出がなされている。このように港湾及び漁港が食料基地北海道を支える重要な社会資本である一方、北海道は積雪寒冷地であって他地域に比べても気象海象条件が厳しいことから、港湾や漁港における産業活動は北海道以外の地域に比べて必ずしも安定的、効率的なものとなっていないという課題がある。また、漁業従事者の高齢化や減少が進んでいることから、将来的に食料基地としての生産能力を維持することも深刻な課題となっている。このため、将来的にも水産物に関する北海道の食料基地としての役割を確固たるものにするためには、港湾及び漁港において生産流通拠点として必要な産業基盤を強化する必要があり、安定的かつ効率的な産業活動を行うことができるような港湾及び漁港の高度化方策について研究することを目的とする。本年度は、研究の初年度として、水産物の食料基地として必要な港湾及び漁港の役割についてとりまとめるとともに、これまで実施してきた港湾及び漁港の整備についてレビューし、現状の諸課題について体系的に整理する。また、港湾及び漁港の高度化方策を推進していく上で必要な基礎的な知見となる、係留小型船の動揺現象解明に関する研究について中間報告を行うものである。 |